株式会社メティス metis

猫と父の不思議な因果関係

今月は雨ばかり、寒い日ばかりで、全体的に鬱陶しい時間が続いている。
紅葉を楽しんで、ゆったりとしたひと月を過ごしたかったのだが…。
中旬に、我が家にやって来た牛模様の子猫の去勢手術を行った。
生後8か月になり、身体も3キロ半ばまで成長して、時期的には全く問題なかった。
去勢手術を終えて、自宅に戻ってきたわけだが、これまでの猫たちと違って様子が変。

顔や首回りがむっくりと膨らんでしまって、周囲の干渉を避けるように部屋の隅でじっとしている。
呼吸も荒く、一晩様子をみたところ、さらに悪化していた。
身体全体が膨らみ、撫でてみると、空気が抜けるようなプチプチという音がするではないか。
浮腫んでいるというより、風船のように膨らんでいるのだ。
すぐに病院に連れて行くと、皮下気腫という状態になってしまっていると説明を受けた。

気管が破れてしまっていて、呼吸する度に、そこから空気が漏れて、体中に広がってしまっている状態のようだ。
食欲0、目はうつろ、身体は膨らむ一方で、いかにも辛そう。
しばらく検査をさせてほしいと時間を求められ、あらためて、説明を受けた。
「手術ミスです。全面的にこちらのミスで、あってはならないことが起こってしまいました。絶対に治してお返しできるよう善処します。」
私もいろいろ調べたのだが、猫の全身麻酔のときには、気管内挿管で行う。
人間のようにマスクなどをつけることはできないので、麻酔や酸素を送るためのチューブを器官に挿入して麻酔をするわけだ。
そのときに、どうやら気管を傷つけて穴が開いてしまったようで、このようなミスはめったにないらしい…。
人間相手でもありがちな話で、ミスをなかなか認めないのが医者。
とくに、動物相手だと、いくらでも誤魔化しができるので、それで泣き寝入りして悲しい思いをした飼い主はけっこうな数いるらしい。
たしかに、医者として、ミスを認めることは、諸々考えるととても難しいこと。
誤魔化してその場をやり過ごしたくなる気持ちはとてもよく分かる。
このような状況で、何よりもまず第一にミスを認め謝罪をしたこの動物病院と先生に拍手を送りたい。
人為的なミスは避けようがなく、故意にやったわけでもない。
非を認めるところから始めることで、治療のスタートに立てる。
曇りのない心で対峙できることが、命を救うことにつながると思うのだ。
一進一退いろいろあったが、なんとか容態は回復して、いまは病院で様子をみているところだ。
食欲も出て、毛づくろいもしているらしく、あと一週間ほどあずけて問題がなければ退院という運びになりそうだ。
時として、このような不思議なことが起こったりするものだ。
このような出来事があったこの時期に、高校の同窓会があった。18日のことで、三鷹・吉祥寺で行われた。
高校時代で30年以上も前のつながりなので、知っている人も知らない人も覚えている人も覚えていない人もいろいろいる。
半分程度は初対面のような感じなのだが、こんなことを言われた。
「長坂先生の息子さんですよね」
私の父親は立川の中学校で教師をしていて、その教え子だったらしい。
その中学校からうちの高校へ5人が進学をしたそうで、高校に入学してから私のことを見に来ていたらしい。
「あれが長坂先生の息子さんか」
それぞれがどう感じたかは分からないが、好奇の目で見られていたのだと思う。
それがどのように私の父親の学校の生徒に伝わったかは分からないが、自分の知らないところでいろいろなことが起こっていたわけだ。
教え子によれば、近々、中学校の同窓会をするそうで、私の父親の近況を知りたいとのことだった。
残念ながら、すでに他界しているので、これまでのことを掻い摘んで伝えておいた。
予期せぬ父親との再会。
そういえば、私の父親は、失敗をしたことよりも、その謝り方にとてもうるさい人だった。
失敗や責任を認めて取り組むからこそ、物事は好転していく。
謝罪の難しさと大切さ、それとともに不思議な因果を肌で感じた今日この頃である。

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