株式会社メティス metis

カラスの巣立ち

先日、カラスの雛を見つけた。
おとなしくしてじっとしている。忘れたころに気休め程度に歩いたりする。
弱っているようで今にも死にそうに見えるし、親カラスを待ってじっとしているようにも映る。
どうしたらいいものかと、私もその雛鳥に付き合いながら、1時間ほど一緒に過ごした。

結論は、そのまま雛鳥を放置した。
調べてみると、これはカラスの巣立ちなのだ。
親鳥は巣立ちの時期を迎えると、敢えてしばらくは雛鳥に餌を与えず、弱らせた上で自然に放つ。
すぐにでも自力で餌を得なければ生きてはいけない。
このような極限状態に追い込んでこそ、雛鳥は自分の力で生き抜いていかなくてはならないという自覚を持てない。
なんとも厳しい話だ。

そんなときに、経営再建中のシャープの話が飛び込んできた。
1218億円の資本金を1億円に減らす方針を決めたのだという。
経営破綻もしていない大企業様が99%の減資を行う、なんとも珍しい話。聞いたこともない。
資本金が1億円となり、これでシャープは中小企業に定義されることになるわけだが、それと同時に主力銀行が2000億円の資本支援を行うそうだ。
資本金の2000倍の資本支援・・・。
中小企業でありながら、この厚遇。
これでは単なる数字上のマジックとしか世間には映らない。
なんとも羨ましいというか甘っちょろい話で、どうしてもこのカラスのことが頭から離れない。
手を差し伸べられなければ、支えられてなければ生きていけない、目的を達成できない。

私も含めた、それが人間。
しかし、手を差し伸べるべき親鳥が敢えて自分の子供に死を背負わせた状態で、生きる力を与えようとする。
絶対にカラスには勝てないと心底感じた。
まるで雛鳥を見守るように、私の頭上で飛び回り鳴き声をあげているカラスたちを見て、私も生きる力をもらったような気がした。


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