株式会社メティス metis

黒船来襲

台風が通り過ぎた穏やかな日だった。
仕事に行こうと眠たい目をこすりながら、自宅マンションのエレベーターを降りると、黒猫が歩いていた。

マンションの敷地内をのらーりくらーりと歩く。
もちろんペット可のマンションだから猫がいても不思議ではないのだが、飼い主の姿も見えず歩いているのは明らかにおかしい。
どこかの部屋から抜け出したのかと思い、人懐っこい黒猫を抱え、管理人室に飛び込んだ。

うちのマンションでペットを飼うにはペットクラブに入り写真を提出する義務があるのだが、黒猫の該当は一部屋。
とりあえずその住人に管理人が連絡を取ると、どうやら違うそうで、自分の猫ではないという。
ペットクラブに入らず黒猫を飼っている住人が存在するのか、どこからか迷い込んだのか判断ができない。
とりあえず管理人室で黒猫を預かり、マンション内に張り紙を出すことになった。
500世帯以上ある大型マンションなので、モグリで飼っている住人もいるだろう。

しかし、三日経っても誰も声をあげない。
その為、黒猫の処遇に関係者が頭を抱え始めたのだ。
飼い主が見当たらないことから、今度は貰い手を探すことになった。
子猫ならいざ知らず、成猫ということで、誰も手をあげない。
私は猫好きで、ポリシーは行き場のなくなった猫を飼うことであり、この展開になってしまうとうちで飼うしか選択肢はなくなってしまった。

そんなわけで、我が家に黒猫が来た。
ただでさえ真っ黒で表情さえ掴みにくく、年齢なんて予想もつかない。
行きつけの病院の先生の話では、5歳~8歳とのこと。
なんでも歯石の量でおおよその年齢を判断するのだそうだ。
結局、間をとって7歳ということで落ち着いた。

まじまじ黒猫を見て思うことは、やっぱり存在そのものが意味深なのだ。
黒猫にまつわる逸話が多いのもうなずける。
日本では昔黒猫を飼うと労咳が治ると迷信があったそうな。
あの沖田総司が労咳で寝込んでいたときにも黒猫を飼っていて、死に際にそれを斬り殺そうとした。
しかし、黒猫を斬ることができず、その瞬間、自らの命の終わりを悟ったと言われている。
黒いものが部屋の中を歩いたそれだけで、何だか意味があるような気がする。

社名を決める時以上に名前に悩んだ。
黒猫のタンゴの反対読みで「ゴンタ」、黒船から「ペル」、あんこから「あん」などなど紆余曲折あって、結局「マロ」とした。
なんだか目の前が公家の眉のようにちょっと剥げていて、それからマロとなったわけだ。

人にはなつくのだが、対猫には、相当気が強い。
ちょっとしでも他の猫の気配があるとすぐに唸り続ける。
うちの猫らも野生の血が騒いで、触発されて唸り続ける。
いまじゃ同じ部屋に入っただけで、戦闘モードだ。
4匹の猫が毎日のように唸り続け、一発触発ムードで、この先が非常に不安である。

どうやればうまくやっていけるのか。
誰か教えてほしい。
家にいて猫のことを考えていると、まさに人間関係がズタズタな会社の社長をやっている気分だ。

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